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2023-12

ライ麦畑でつかまえて


ライ麦畑でつかまえて J・D・サリンジャー著 野崎孝訳 白水社
★★★☆

 高校時代に週一回通っていた塾に「チューター」っていう、授業の合間にプリントなんかを配ったりする大学生がいてね、僕のとってた英語クラスのチューターてのが、K大学っていうミッション系の学校に通ってて、ちょっとお堅いけど一途な感じの女の子なんだけど、毎回毎回「ライ麦畑でつかまえて」って本の話をしてたのさ。「私は登場人物ではだれそれが素敵だと思うけど、みなさんはどうですか」なんてことをね、百万回は聞かされたもんだ。授業の方は居眠りしてばっかししてて習ったことなんかこれぽっちも覚えてないけど、あの子が甲高い声で「ライ麦畑」って連呼してたのだけはなぜか頭にこびりつちゃった。そん時は読んでやろうなんて思わなかったけど、ずっと気になっていたんだろうね。最近ある人にまたこの本を薦められて、それでやっと読んでみたってわけなんだけど、こいつは参ったね。ライ麦畑って題名と、あの女の子のイメージからさ、なんかこう田舎を舞台にした健康的な青春群像みたいなもんを想像してたからさ、それでいまいち読む気がしなかったてのもあるけど、とにかく読んでみたら全然違うじゃないか。じんときたけど、なんだか読むのがつらい話だったな。でも最後はちょっとほっとしたよ。だけどさ、これを書いたのがほんとは大の大人だってのがね、ちょっと嘘っぱちだっていう気がするな。もし、ホールデンて子がこれを読んだら、やっぱしこんなの嘘っぱちだって言うんじゃないかな。

コメント

伝染する

この本、昔読んだんだけどさ、内容はあんまり覚えてなくて、でもしげもとさんの文を読んだらなんとなくホールデンて奴の喋り方が、そうそうこうだったな、て感じでよみがえって来て、で真似して書いてみてるんだけど、やっぱり全然うまくできないや。そういえば大学時代に映研で同期の連中がこの本にえらくかぶれてて、いつか絶対こんな映画を撮ろう、なんて鼻息荒くしてたのを思い出したよ。でもぼく自身はまったくそんな気にならなかったし、奴らがそんなことを言うのが不思議なくらいだったんだよね。それはたぶん、川本三郎って人の評論を読んで、この物語の暗さにちょっと参っていたからだろう。でも今になってこんな文体を書いてみたくなったことが、なんとなく可笑しいと思ったりした。文体って伝染するね。

ありがとう!

素の文体に戻ります。この記事を書いてから、受けないギャグを公衆の面前にさらしたような恥ずかしい気持ちになっていたので、付き合ってくださってうれしいです。
たしかに、この本には一部の人を強烈に魅了するものがあるようですね。
私はあまりのめりこめませんでした。記事では「最後はちょっとほっとした」と書いたけど、これは大人の視点で見てたからなんだな。ほんと、はらはらしどおしだったからね。

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