FC2ブログ

2018-11

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

心的治療(心の治療)

心的治療(心の治療)(兼本浩祐 訳 2009)
Psychische Behandlung (Seelenbehandlung) (1890)

 初出はR・コスマンとJ・ワイス編の『健康』で、半民間療法的性格を持つ医学領域の記事を集めた一般向けの書籍であったとのこと。ここで言う「心的治療」とは、現代では「心療内科」という時の「心療」に近いものと思われる。時期的にまだ精神分析は生まれていないし、後半はもっぱら催眠療法についての記述となっている。

 こういった一般向けの文章を書かせたら、フロイトは天下一品である。豊富な比喩を使った説明で、思わず引き込まれてしまう展開になっている。
 前半では、そもそも病の治療というものは心的治療からはじまったという指摘があり、そこで病者は信仰という期待の中で治療者が行使する魔術的な影響によって治癒に導かれたのであった。そういう魔術的治療は、医学の近代化の中で一旦は医師の手を離れたものの、心的治療という合理的な形で再び取り戻されつつある。こうして、後半は催眠療法の話題に導かれていく。

 含蓄深く、後の分析理論に結びつくような言及があちらこちらにある。例えば‥‥

狭い意味での情動は、身体過程への特殊な関係をその特徴とするが、厳密に取れば、我々が「思考過程」として通常把握しているあらゆる精神状態は、一定程度は「情動的」であり、そうした思考過程のどれ一つをとっても身体的な表出や身体過程を変化させる能力を必ず伴っているのである。(1-237)


 ここで言う「狭い意味での情動」とは、表情や身振りといった形で表現される感情のことであるが、それ以外の思考過程もまた、無意識的な過程を通じて(という表現はここではなされていないが)さまざまな行動へと表出されるのである。こういったテーマは、後に『日常生活の精神病理学』(1901)においてさらに追求されている。

期待という心の状態に対して私たちは多大な興味を抱いているが、それは期待することによって、身体疾患への罹患やそこからの回復に非常に強く影響する多くの心の力が、活性化されうるからである。(1-238)


 ここでいう「期待」は、良い期待だけではなく、悪いことへの期待、不安をも含んでいる。当然、良い期待は良い予後へと、悪い期待は悪い予後へと影響を及ぼすことになる。

 催眠術を行う者が被催眠者に行使する影響については、次のような重要な考察がなされている。

付け加えて言うならば、被催眠者が催眠術者に対して示すこれほどの軽信性は、催眠以外の実生活においては、愛しい両親に相対している子供でしか見られないものであり、自分の心の生活を催眠と同様の従属性で他人の心の生活に合わせてしまう心のあり方は、全身全霊での献身を伴う恋愛関係の一部においてのみ唯一で、しかし完璧な対応関係があるのみである。唯一の対象を敬い、盲目的にその対象に従うことは、そもそも愛というものの特長の一つである。(1-248)


 リビードという言葉こそ使っていないが、まことにフロイトらしい表現である。そして、ここで展開された催眠と暗示についての考察は、30年後の『集団心理学と自我分析』(1921)に引き継がれることになる。

 催眠療法に期待をよせる一方で、最後にはその限界について重要な指摘がなされている。催眠による暗示が万能なのであれば、心因性の病気は催眠術にかけて「治りなさい」と暗示することだけで解決してしまうだろう。しかし、そう簡単にはいかない。

暗示の効力は確かに、疾病現象を生じさせそれを維持している力と対抗しはするが、経験上、後者の力は催眠による影響とは比べ物にならないほど大きな次元の力を持っている。(1-254)


 これは、精神分析治療における抵抗の話につながっていくところである。そして、本書でも比喩的な説明の中で「抵抗」という表現がすでにみられているのである。
H21.11.19

テーマ:本の紹介 - ジャンル:本・雑誌

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://shigemoto.blog105.fc2.com/tb.php/139-1738abd6
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | ホーム |  »

カウンター

カテゴリー

最新コメント

プロフィール

Author:重元 寛人
重元寛人です。本名は佐藤寛といいます。
フロイト全集の読解を再開いたします。よろしく。


facebookページ

リンク

フロイト研究会フロイト研究会

さとうメンタルクリニックさとうメンタルクリニック

クリニック開業への道のりクリニック開業への道のり


X-day

ブログ内検索

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。