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催眠による治癒の一例 ――「対抗意志」によるヒステリー症状の発生についての見解

催眠による治癒の一例――「対抗意志」によるヒステリー症状の発生についての見解(兼本浩祐 訳 2009)
Ein Fall von hypnotischer Heilung, nebst Bemerkungen über die Entstehung hysterischer Symptome durch den "Gegenwillen" (1893)

 『ヒステリー研究』と同時期に書かれた症例報告である。自分の子供に母乳を与えることが出来ない女性が、催眠による暗示によってきれいに治ってしまった。暗示だけで治ってしまったので、彼女がどのような葛藤を抱き、それがいかにして解消されたかということはわからないままで終わった。その辺りがカタルシス療法によって治療された『ヒステリー研究』の症例と異なり、独立した報告になった理由でもあるのだろう。
 しかしそこから引き出されたヒステリー症状理解のためのモデルは、大変示唆に富むものである。

 まずフロイトは、「期待の情動と結びついた表象」というものを考える。それには二種類あって、ひとつは「意図」すなわち「私はあれこれのことをするであろう」という表象である。もう一つは「本来の期待」であり、「あれこれのことが私に起こるであろう」という表象である。意図と期待というものをまとめて捉えるというところがおもしろい。そこには、主体性という根本的な違いがあるように見えるが、それもフロイトにかかると相対的なものになってしまうのだろう。

 期待というものは、不確実性、すなわち望ましい結果が起こらないかもしれないという恐れを含んでおり、それは「不快な反対表象」の集積として表される。意図に対して不快な反対表象が強くなりすぎると、意志の減退を招き、その代表的な状態が神経衰弱であるという。
 これに対してヒステリーでは、不快な反対表象は、意図との関連を外れたところで、身体的な神経支配を通して現実化されてしまう。「意図に反して、吐き気によって授乳ができなくなる」といった具合に。その時点で、不快な反対表象は「対抗意志」として確立されることになる。

神経衰弱における意志力の減退とは対照的に、ヒステリーでは意志の倒錯が生ずるのであり、神経衰弱の諦めを含んだ優柔不断さとは対照的に、ヒステリーでは自分には理解できない内面的な統合不全に対する驚きと怒りが存在するのである。(1-350)

 神経衰弱とヒステリーの違いを招く要因について、ここではヒステリーにおける「意識の解離」への傾向とか、神経系の連合鎖における「部分的な疲弊」といったことによって説明が試みられている。

 追加の事例として、静かにしないといけない時に舌打ちをしてしまう女性の例があげられ、さらに、中世修道女の神への冒涜と淫猥な言葉に満ちたヒステリー性錯乱、汚言症を伴うチックのことなどに話題は広がっていく。

H22.1.10

テーマ:書評 - ジャンル:本・雑誌

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