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ある特定の症状複合を「不安神経症」として神経衰弱から分離することの妥当性について

ある特定の症状複合を「不安神経症」として神経衰弱から分離することの妥当性について(兼本浩祐 訳 2009)
Über die Berechtigung von der Neurasthenie einen bestimmtem Symptomenkomplex als >>Angstneurose<< abzutrennen (1894)

 前の論文にひきつづき、本論文もフロイト理論の発展において大変重要な意味をもつ。

 まず、「不安神経症」という現在にも続いている疾患概念が、ここで初めて提示された。そして、その中心となる情動として、「不安」が正面からとりあげられた。
 少々意外なことではあるが、不安と不安神経症について大々的に論じられることはその後久しくなく、後期の論文『制止・症状・不安』(1926)を待たねばならない。ちなみに『制止・症状・不安』では、不安について本論文で提示された仮説が根本的に変更され、さらに『防衛-神経精神症』のテーマとなっていた「防衛」という概念が復活したのであった。

 不安というものは、それほどフロイトにとって困難なテーマであったらしい。本論文によれば、不安神経症における不安は「抑圧された観念に由来しておらず、心理学的分析においてはそれ以上には還元不能であり、精神療法では対抗することができない(1-421)」のだという。この時点では「精神分析」という言葉はまだ使われないが、要するに分析的技法によって解明されることも治療されることもできないということになる。

 本論文では、不安神経症の症状を記述し、患者への問診からその病因を推測するという方法で考察をすすめている。

 症状記述においては、「何か悪いことが起こりそうだ」という不安な予期を慢性的不安の中核症状としてあげている。そしてそれをベースに起こる不安発作を、その際に起こる身体症状に注目して記述している。身体症状としては、動悸、呼吸困難、発汗、振戦、食欲亢進、下痢、めまい、うっ血、感覚異常をあげている。

 不安神経症の問診によって明らかになった重要な要因は、男性においても女性においても「性生活に由来するさまざまの有害事象や影響(1-424)」であったという。有害事象の中でも特にフロイトが重視していたのは、体外射精である。

 以上のような検討の結果導かれた仮説は、以下のようなものであった。

すなわち、不安神経症の機制は、心の領域から身体的な性的興奮が逸らされてしまい、その結果、この興奮が異常な形で利用されることのうちに求められるべきであるという推察がそれである。(1-434)

 本論文では、「リビード」という言葉が初めて登場し、キーワードとして繰り返し使われている。ただしこの時点でそれは、心的過程として意識されうる性欲の量を表しており、後のように無意識的なものをも含む概念ではない。そもそもまだ「無意識的」という概念がないので、リビードの元になるものは単に「身体的な興奮」と呼ばれている。

 もう一つ、不安の本質に関連した重要な概念として登場するのが、「投影」である。

内因性に出現する(性的な)興奮を相殺することができない場合、精神はこの興奮を外部に向けて投影するかのように振舞うのである。(1-439)

 内的な危機に際してそれに十分対応できない心的装置が、それを外部から来るものとみなして防衛しようとするというのは、この後もフロイトがしばしば採用する基本的な考え方の一つである。

 最後に、不安神経症と他の神経症との関係、およびその混合について述べられる。
 不安神経症と神経衰弱は、共に「興奮の源泉や障害の誘因が身体領域にある(1-441)」という点で共通しており、それらが心的領域にあるヒステリーや強迫神経症とは対極にある。一方、不安神経症と神経衰弱は、興奮の集積(不安神経症)と貧困化(神経衰弱)という方向での対極をなしている。これらがさまざまな割合で混合しておこることも多く、混合神経症とみなされる。

H22.3.18

テーマ:書評 - ジャンル:本・雑誌

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