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舞台上の精神病質的人物

舞台上の精神病質的人物 (道籏泰三 訳 2007)
Psychopathishe Personen auf der Bühne (1905-6)

 フロイトの没後に「季刊精神分析」に英訳が発表されたのが初出(1942)で、実際には1905年末か1906年初めに書かれたものと推測されている。生前にフロイトからマックス・グラフ博士に送られた原稿であるという。どうしてその時に発表されなかったのだろうか。
 題名の「舞台上の精神病質的人物」とは、主にハムレットを指すのであるが、この文章ではハムレット自体の分析はなんだか中途半端なままに終わっている。だから、読んだ時にはこれは未完の原稿なのだろうと思ってしまった。

 この文章でおもしろいのは、演劇がどのように観客に快をもたらすかという考察である。もちろんそれは観客が主人公の人生を疑似体験するからなのだが、それが不幸な結末に終わるような悲劇もまた人々に感動をもたらすのはなぜなのか。
 そこでは、まず「われわれ自身の情動が存分に荒れ狂ったのち治まる(9-173)」ということが大事であり、それによってすっきりと心が軽くなるとともに、そこに副産物として「性的な共興奮」といったものが加わっているのだという。

 これは、演劇だけでなく現代であればすばらしい映画を見たときの感動などにも当てはまるだろう。たしかに、自分の人生だったら苦痛でしかないような作り話に涙を流せば、劇場を出たときにはすっきりした気分になる。安全なところに戻ってこれる保障があれば、激しい悲しみは心地よいカタルシスとなるということか。
 われわれの実人生は、なるべく激しい感情を避けるようにと臆病に舵取りをされている。疑似体験の中で普段していないような感情の氾濫をあえて起こさせることが、心の健康にとってもよろしいことなのかもしれない。その際におこるという「性的な共興奮」というのは、なんだかいまひとつよくわからないが。


シェイクスピア

 フロイトは相当のシェイクスピア好きだったことで知られている。多くの著作の中で、作品や登場人物について言及したり引用したりしている。ひとつの作品を分析した著作としては、「ベニスの商人」を扱った「小箱選びのモティーフ」がある。言及された回数としては、おそらくハムレットが一番多かったのではないだろうか。もちろん、エディプスコンプレクスとのからみである。
 シェイクスピアには、別人説というのが幾つかあって、フロイトはシェイクスピア=オックスフォード伯説というのをかなり熱心に追求していた。「モーセという男と一神教」の注釈に、そのことが触れられている箇所がある。

 本論文では、シェイクスピアの劇が感動を与える秘密について、それが万人の抱いているコンプレクスに大きく関わり、そこの部分で観客の心を動かしつつも、それを明確に暴き出すことはしないところにあると指摘している。
2008.1.27

テーマ:書評 - ジャンル:本・雑誌

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