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夢とテレパシー

夢とテレパシー(須藤訓任 訳 2006)
Traum und Telepathie (1922)

 「精神分析とテレパシー」の少し後に書かれ、翌1922年の「イマーゴ」誌に掲載された論文。もともとウィーン精神分析協会で講演する予定の原稿だったが、結局講演は行われなかったらしい(解題より)。
 これもテレパシー関係の論文ということで、発表までに紆余曲折があったのだろうかといろいろ想像させる。この論文自体にも妙なところがあり、以前に著作集で読んだ時には最後のところで「はてな?」と首をひねった。

わたしは皆さんに、オカルト的な意味でのテレパシーの実在性を認める立場を暗々裏にとろうとしているという印象を与えたでしょうか。そういう印象は避けがたいだけに、もしそうなら、大変遺憾に思います。というのも、わたしは実際、完全に公平でありたいと思っているからです。そうすべきあらゆる理由がわたしにはあります。テレパシーの実在性について、わたしはいかなる判断もつかないし、何も知らないのですから。(17-191)

 本論文では、前のものに比べるとテレパシーを認めることに否定的な調子で論述が進んでいくのだが、終わりの方になって急に肯定的な論調になり、最後は上記引用で締めくくられる。

 当時はテレパシーという現象がかなり灰色に見え、思い込みによる幻影なのかあるいは将来科学的知識の一部になるのか、実際のところ判断がつかなかったということはあるだろう。
 そんな状況において、精神分析の創設者フロイトとしては自身の発言が後世にも長く影響を与えるという自負と責任があったのだろう。将来テレパシーが実証された場合と否定された場合、どちらに転んでも発言が見当はずれなものにならないように。そんな計算があったのではないかとも思える。

H19.5.1

どちらでもおなじ

 本論文は、テレパシーに関連した二つの夢の事例からなっている。これらの事例はフロイト自身が分析で取り扱ったものではなく、当事者が手紙によって報告してきたものだ。
 そういう意味でこれらの事例がもつテレパシーの証拠能力は小さい。だいいち、実際に相対して分析するのでなければ夢の分析は完全にはなしえない。また、わざわざこういった夢を報告してくる人にはある種の思惑があるに違いない。

 フロイト自身はオカルト的体験をすることが乏しく、テレパシー的や予言的にみえる夢をみたとしても、それは当たらなかったという。また27年間の分析家としての活動の中で、患者がテレパシー的な夢を体験するところに立ち会ったことがなかったともいう。
 これらの事実からしても、テレパシー的な夢というのは、そういうものを信じたい人によって作られる場合が多いのではないかという推測がたちそうだ。

 しかし、実はこの論文の目的はテレパシー的な夢が存在するかどうかということを検証することではない。その点については、批判的に吟味はなされるが最終的な結論にいたらない。むしろ、ここでの重要な主張は、たとえテレパシー的なお告げが眠っている人にやってくるとしても、それは夢形成のための素材の一つとして取り扱われるに過ぎず、一番本質の夢工作のプロセスにはかかわらないということだ。

H19.5.2

超常現象の起源

 第一の事例は娘の双子出産を伝えるテレパシー的な夢を見たという男性のものであった。フロイトの分析は、この事例においてテレパシー的お告げが仮にあったとしても、それは睡眠中の物音のように夢に素材を与えたに過ぎず、夢の本質は当人の抱いていた近親相姦的欲望の成就というところにあるというもの。

 第二の事例は、テレパシー的な幻覚をよく体験する女性を繰り返し悩ませる夢の報告である。この夢自体はテレパシー的でもなんでもない。むしろ夢解釈によって明らかになった父へのエディプス的欲望が、彼女が想い出の錯誤によってテレパシー現象を作り出す際の原動力になったという解釈。

 第二事例の考察が大変おもしろく、また「霊感の強い」と自認するような他のケースにも応用できそうだ。本人だけが経験したというオカルト的体験は、他人の記憶と照らし合わせて現実性を確かめることができない。にもかかわらずというか、だからこそというか、これらの体験の現実性は当人によって間違いないこととして主張されがちである。この確信感は、その出来事の現実性ゆえではなく、それが当人にとっての強い欲望に基づくものであることから生じる。

H19.5.3

テーマ:書評 - ジャンル:本・雑誌

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