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2023-05

エディプスコンプレクスの没落

エディプスコンプレクスの没落(太寿堂真 訳 2007)
Der Untergang des Ödipuskomplexes (1924)


 論文「自我とエス」についての補足的な意味をもつ小論文。四歳頃にピークを迎えるエディプスコンプレクスが、小児の欲望断念によって終焉し、次の潜伏期に移り変わる過程についての考察である。この部分が重要であり、再考を続けていたことがわかる。

 いくつかのポイントがある。第一に、題名にもなっている「没落(der Untergang)」という言葉である。この重要な過程は、抑圧といってもよいが、単なる抑圧ではない。「抑圧以上のものなのであって、理想的なかたちで運べば、かのコンプレクスの破壊ないし棚上げにも匹敵するものである(18-306)」とある。
 どこがどう違うのか、具体的なことはあまり記されていない。私の考えでは、この時期に続く潜伏期における昇華による欲望追求ということが重要なのではないかと思う。

 問題の没落の過程については、親からの去勢威嚇への反応というこれまで通りの説明がある。しかし、それだけでなく論文の冒頭では、親への欲望がそもそも実現不可能なことを知った小児が自分からあきらめるという見方と、乳歯が抜けて永久歯に生え変わるように遺伝的にプログラムされた過程であるという仮説をも提示している。そして、それらは一つの過程が多面性をもつということを表しているようだ。

 さらに、論文の最後では女の子のエディプスコンプレクスについての考察がなされる。この問題は、続く「解剖学的な性差の若干の心的帰結」と「女性の性について」といった論文でさらに詳しく論じられることになる。
2007.12.15

テーマ:書評 - ジャンル:本・雑誌

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